かなへび事件


 リクエストにお応えして、この忌まわしき事件を記すことにしよう。



 まずいっておく。


 あまり怖いものがないように見える私であるが、こう見えて(見えないけど)、爬虫類が非常に苦手である。よく、脚がなければ平気とか、その逆とかの人がいて、げじげじは平気だけど、蛇はダメとか、その逆ってのがあるが・・・つうか、げじげじは爬虫類じゃないが、ともかく、とかげ、蛇、いもり、やもり(ってこれらは両性類か?)、あとカエル(だから両性類じゃん・・・つうか両類だし)とか・・・・どうも、ぬるぬるくねくねしていて、触ると、ぬちゃっとしそうなものがイヤらしい。いやらしいって、そういう意味じゃ・・・・ともかく、噛む怖いとか、毒がありそうで怖いとかいうんのではないので、たぶん、気色悪〜っていう怖さなんだと思う。コブラが怖くてニシキヘビは平気♪とかいうんじゃない。ぬるんとした感じとかが、すごくイヤなんである。だから、爬虫類でも両生類でも、ああいう類のものはイヤなのよ。ってしつこい?

 
 そんな中。
 昨日の町ぐるみ大清掃で、不法投棄とみまごう(いや、そのものっていう話も)ゴミの山をマンションの自治会の人々と持ち帰り、ゴミ置き場で仕分けをしていたら、ご丁寧に紐でしばって投棄・・・いや、置いてあった板切れの中から、体長10cmほどの かなへび が出てきた。


 実は私もこのとき初めて見たのだが、小さいトカゲちゃんみたいな感じっていうか、確かに模様とかは蛇に近い。いもり や やもり に比べるとドライな感じがするので、ぬちゃ率は低そうではあるが、トカゲ様の姿は、私の恐怖心をそそるには十分なんである。


 ぎゃーーーー!と、悲鳴を出すことはなかったが、頼むから私の近くに来ないでねと思っていたら、3年生の女の子が「あ、かわいい♪」と言って、すっと取り上げ、ほお擦りせんばかりのかわいがりよう。


 ひーーーー、信じられん!つうか、あんた神様に見えるよ・・・って感じ。


 その子のお母さんと私は親しいので、子供同士も男女の違いはあるものの、そこそこ仲良くしている。


 で、ゴミの仕分けが長引きそうだったので、子供を先に帰し、仕事を終えてうちに帰ると、さっきのカナヘビの女の子が、うちに来ており、私が一旦外に出た間にお家に帰った。


 その後、シャワーを浴びたり、おやつを食べたり、清掃について夫婦で協議したり(がはは。何を協議してるんだが)、お昼ご飯を食べにいったり、平和に過ごしていた昼下がり、雲ちゃんが一言、



「○○ちゃんがさぁぁ、



かなへび忘れていったんだよねぇ」






 


 え?





 ええ?





 


 えええええええええええ!




 っくっくっくわなふえびが、




 うちにいるのかい?!


















 ぎゃーーーーーーーである。





 最初、嘘かと思って(嘘かと思ってって・・・)、「何言ってんの?」みたいなノリだったが、雲ちゃんたら、「これで確保しよう」とかいって、捕虫網を部屋から持ち出し、ビデオなどを置いてある棚の下を覗き込み、「ほら、あそこに。あ、あ、あ、奥にはいちゃったよ」とか言ってるしーーーーーーーーーー!







 ほんとにいるのかよぉぉー!












 自分がその時何をしていたが、いまとなっては思い出すこともできないが、ともかく、私は椅子の上に上がり、面白がる夫と雲ちゃんに、



「ふざけてないで、早く捕まえてよね」



と、椅子の上から指示。



 ちょろちょろと動き回る カナヘビちゃんと格闘する二人を追い立てるように捕獲を指示し続けました。




 果たして、無事確保されたカナヘビちゃん。捕虫網の中に捕えられ、くるんと一度回しで出てこないようにはしてあるが、なんとなくそこに立ち尽くす二人。




 おいおいおい、まさかそれを私の方に持ってこようってんじゃねぇだろうな・・・・・雲ちゃんは薄く笑っているようにも見える。いや、気のせいか。二人が不埒な考えを起こす前にと、





「それ、放してあげようよね、ね、ね、ね」






と念を押す私。



「そうする?」と雲ちゃんに意見を求める夫。






 よけいなことすんじゃねぇぇ。


 よけいなことをすんじゃねぇよぉぉお!






 この際、育児方針について関係各所から抗議を受けようと、この非常事態に、雲ちゃんの意見などどうでもよい。速やかに、そのカナヘビちゃんを外に放してやってくれよという私の願いが届いたか、夫は「じゃあ、外に放そうね」と雲ちゃんにいい、私のほうに向って・・・





え?







 こっちにくんなよ。ベランダから放すのかよ。


 一旦降りかけた椅子に再度登り、






 「玄関からにしてよね」








 と、厳しく指示し、無事カナヘビちゃんは玄関から外の世界に放されました。





 あああああああああああああー、疲れた。


 あっさり書けば三行くらいで済む話ですけどね。あたしにとっちゃ、大事件だったんでござますよ。
 あーーーー、怖かった。でも、よくぞあの時点で見つかったなっていうか、雲ちゃん、なんであんな時まで黙ってのさ。ていうか○○ちゃん、カナヘビ忘れていかないでよ(^^;)。お母さんに言うと叱られるからって言ってたから、おうちには持って帰れず、かといって、そのまま放すのは寂しい・・・・みたいな子供心はわかるけど、よりによってうちに、よりによって、カナヘビは、ヘビーだぜ。かなヘビだけに・・・・って、これがオチかよ。



 これがカナヘビ事件の全容です。